いろいろ

海外で卵かけご飯を食べるために!

先日インスタとスレッズに「サルモネラワクチン済みの卵がオランダのスーパーで買える」と投稿をしたら、大きな反響をいただきました。オランダはもちろんのことヨーロッパ各国に住んでいる多くの卵かけごはんLoverのみなさんに届いたみたい!

で、調べるうちに国によって卵のサルモネラ対策はいろいろ違うってことがわかりました。
そこで今回は「海外で生卵を食べる」ということにフォーカスしてみます!

生卵を食べる習慣について

まず、生卵を食べる食文化というのは世界的に見ても珍しいそう。日本では卵かけごはんの他にもすき焼きに使ったり、麺類にも生卵を落として食べたりといろんな食べ方がありますよね。他にアジアでは韓国のユッケだったり、中国のおかゆだったりに生卵を添える文化はあるようです。

あと生卵そのものじゃないけど、イタリア料理もティラミスやザバイオーネといった、加熱しない卵を使ったデザートなんかもあります。

よく「海外では生卵は食べない方がいい」と言われるけど、これはサルモネラ菌による食中毒の危険性について。私も海外生活を始めた頃は「海外の卵=サルモネラ中毒怖い、食べるの怖い!」みたいな感覚がありました。でもちゃんと調べてみたら、ポイントを押さえれば、これくらいならOKかな?みたいな、自分なりの「OKライン」が見えてくるなと思いました!その辺をまとめてみたいと思います。

そもそも、サルモネラ食中毒とはなんだ。

そもそもサルモネラ食中毒とはなんでしょう?順番に見ていきますね。

原因のサルモネラ菌と、感染源

原因となるのはサルモネラ菌で、広く自然界に生息している細菌です。

  • 牛や豚、鶏などの家畜の腸内や、河にも生息している。
  • 7℃以下の低温では、生育できない。(死ぬわけではなく、増えないだけ)
  • 冷凍しても同じく、生育しないが死滅させることはできない。
  • 湿度が高いところ、温度が高いところ(35~43℃)で活発に増える。
  • 熱に弱く、70℃で1分加熱すると、ほとんどの菌が死滅する。

人間が食中毒になる要因は、サルモネラ菌がついた食べ物(肉や卵、汚染された水で洗った野菜)を食べたり、保菌しているペット(犬や猫、カメなどの水生動物)を触ったあとに手を洗わなかったとかが主な原因です。

サルモネラ食中毒の症状

サルモネラ食中毒になると、以下のような症状が現れます。
他の食中毒と同様、少し菌が入ったくらいでは普通は大丈夫なんだけど、たくさんの菌がついた食品を食べたり、抵抗力が低い場合(体調が悪かったり、乳幼児や高齢者)は発症する可能性が高くなります。だいたい体内に100万個以上のサルモネラ菌がいると、発症にいたることが多いそうです。

  • 食後6時間~48時間後くらいから、症状が出始める。
  • 嘔吐、下痢、下腹部の痛み、38℃くらいの発熱。
  • 3~4日ほど症状が続くことが多いが、1週間以上続く場合も。
  • 症状は比較的軽く自然治癒することが多いが、乳幼児や高齢者は重症化する場合も。

たまごはどうやって感染するの?

たまごは、親鳥経由で感染します。サルモネラ菌をもった親鳥から生まれたたまごは、感染している可能性があるということ。さらに、卵の中に菌がいる場合と、卵の殻に菌がついている場合の2パターンがあります!

もし、親鳥の卵巣にサルモネラ菌がいると、たまごが作られる時点ですでに白身や黄身にサルモネラ菌が入り込んでます。

腸の中にサルモネラ菌がいると、糞にサルモネラ菌が含まれていて、産卵の時に殻に菌がついてしまいます。

なのでたまごのサルモネラ菌食中毒の原因は、「たまごの中身」・「殻」、どっちも可能性があるんですね。

サルモネラ食中毒にならないための対策!

一般的なサルモネラ対策

さてサルモネラ菌も、他の食中毒対策同様に「つけない」「ふやさない」「やっつける」が3大原則。なので、

  1. 菌に汚染されていないたまごを選ぶ
  2. 菌が増えないように、適切に保存する
  3. 加熱などして、菌をやっつける

というのが、対策の基本です!
具体的にいうと、

  1. サルモネラ対策済みのたまごや、飼育環境がしっかり管理されているたまごを買う
  2. 温度が高い(35~43℃)と増殖するので、冷蔵保存する
  3. しっかり加熱してから食べる

という感じです。
海外の場合は、生食文化がほとんどないので、加熱して食べることが前提。
だから③で対策できるはずなので、①・②はそもそもあまり考慮されていない。
これが「海外のたまごは、生で食べたら危ない」という理由なんですね!

逆に言うと日本のたまごは、①・②も考慮しているので、加熱しなくても大丈夫なたまごが流通しているんです。具体的には飼育環境の衛生管理を徹底したり、次亜塩素酸ナトリウムで殻を消毒したり、低温で流通・販売したりといったもの。消費期限を短めに設定するのも工夫のひとつだそうです。ちなみに殻を洗浄すると、もともとたまごが持っている細菌の侵入を防ぐバリアがなくなってしまうため、それも冷蔵保存する理由だとか。

2020年に農林水産省が行った調査では、市販の卵1870パックを抜き打ち調査したところ、殻にサルモネラ菌がついていたものが6パック、卵の中身からサルモネラ菌が検出されたのが1パックでした。この調査では20個入り1パックをまとめて検査していて、もし20個のうち中身が汚染された卵が1個だけだとしたら、その割合は10万個に3個(0.003%)と、とても低い割合だそうです。生産者や販売者のみなさんの努力のおかげですね!

言い伝えのような対策は効果があるのか・・・?

ちなみに、私はオランダ来たばかりの頃、海外で生卵を食べる知恵みたいのをたくさん見かけました。たとえば、

  • オーガニックの地卵を買う(ストレスフリーの鶏は抵抗力が強くて感染しづらい)
  • 熱湯をかける(殻の表面についている菌を死滅させる)
  • 60℃のお湯に4分漬ける(殻の表面と内側についた菌を死滅させる)

きっと先人たちの涙ぐましい努力が凝縮されているんだなぁ・・・と思うほどに、ほんといろんな方法が出てきました。

でも正直なところ、何もしないよりはましかもしれないけど、どれも決定打にかけるというか、うまくいけば・・・という感じかもしれません。

例えば、熱湯をかけて殻に付着したサルモネラ菌をやっつけても、最初から中身が汚染されていることもありうるわけです。

そうなるとやはり、①。
「そもそもサルモネラ菌に汚染されていない環境」で親鳥が飼育されていることが、重要になってくるんじゃないかな、と思います。

世界各地の「サルモネラ対策済みたまご」

とはいえ「そこがまさに!海外じゃ日本と違うから困ってるんだよ!」というわけで・・・

でも調べていくうちに、生食文化がない国でも「半熟状態のたまごを安心して食べられるように」と①の「サルモネラに汚染されてないたまご」を目指していることがわかりました。他にもあるかもしれないけど、とりあえず見つけたものを紹介します。

ちなみに1970年代に欧米でサルモネラ菌食中毒が多く発生したのをきっかけに、機に各国でたまごの生産や流通に関するガイドラインを定められていったそうですよ。

アメリカ

アメリカは1970年代に多くのサルモネラ食中毒が起き、現在もたまごが原因のものだけで年間79,000件も発生しています。その原因は自家製アイスクリームなど加熱しない卵を使用した料理によるものや、加熱が不十分で逆に暖かい状態でサルモネラ菌が急に大繁殖してしまっている料理を時間が経ってから食べる、というケースが多いようです。

そこでFDA(アメリカ食品医薬品局。日本の厚労省みたいな機関)によって、たまごの生産者に対してサルモネラ対策ガイドラインが設けられています。鶏舎内の検査をして衛生管理を保ったり、低温で流通するなどのルールが決められています。

ただそれも、生食を保証するものではありません。なのでFDAは、加熱しないレシピのためには低温殺菌された卵の使用を勧めています。低温殺菌卵は「Pasteurized Egg」と言います。これはたまごが固まらない温度で、サルモネラ菌を死滅させたもの。見た目は白身が少し濁っているけど、味などは変わらないそうです。

どこのスーパーにもある商品ではないようですが、Pasteurized Eggと記載されているものを探してみてください。(Davidson’sというメーカーが有名みたいです。)

ちなみにネット上では家庭での低温殺菌卵の作り方がたくさん出てきますが、FDAは家庭でのやり方でサルモネラ菌を完全に死滅させるのは難しいとして推奨してません。

参照
What You Need to Know About Egg Safety
Egg Safety Final Rule

イギリス

イギリスには、卵生産業者の業界団体British Egg Industry Councilがあって、品質チェックを行っています。その中でBritish Lion eggsという認証制度があり、この認証を受けている卵は半熟や生で食べても安全とされています。

参照
British Lion eggs

北欧(ノルウェー、フィンランド、スウェーデン)

北欧の国々は、特に生食文化が盛んなわけじゃないけど、元々国レベルでサルモネラ対策が進んでいて、市販されている多くの卵がサルモネラフリーだそうです。

スウェーデン
鶏の飼育や卵の生産、流通など衛生面での厳しい規則があり、基本的にサルモネラフリー。
スウェーデン食品庁(検査方法など)
スウェーデン食品庁(品質管理)

ノルウェー
食品安全局が厳しく管理していて、市販されている卵はサルモネラフリー。
Nyt Norge(ノルウェー産原産地マークのサイト内、卵の説明ページ)

フィンランド
こちらも国の規制でサルモネラ菌の数が厳しくチェックされています。
フィンランド食品庁

オランダ

オランダは国としての厳しい規制はありませんが、メーカーが独自に自社ブランドの農場でチェック体制を設けたり、ワクチン接種を行ってサルモネラフリー卵を出荷しています。

オランダでサルモネラ対策済みの卵を買うには?

というわけで、オランダで生卵を食べたい場合は、サルモネラ対策済みのメーカーの卵を買えばOKです。それがこちら!

Blije Kip en Eieren

アルバートハインで購入できます!
Bioとか放し飼いとかいくつか卵パッケージに種類がありますが、このメーカーのならどれもサルモネラ対策済みです。

安心して卵かけごはんライフを楽しもう!

海外でも生卵を食べたい場合は、生産者によってサルモネラ対策がされているのが一番無難ということですね。でもその方法はワクチン接種だったり、飼育環境の厳しい管理だったり、卵の低温殺菌だったり様々。

人によって「安心」と思う基準はさまざまなので、自分にとってぴったりの卵を選んで購入するのがよさそうです!

私はオランダのBlije Kipの卵をアルバートハインで買って、卵かけご飯もすきやきも、思う存分満喫しています~。